今月読んだ本です。
kindle bookで「Where the crawdads sing」(Delia Owens)を読みました。作者は動物学者で小説家デビューの作品です。湿地帯に住む鳥や動物など自然の描写が細かいです。
親や兄弟に見捨てられてノースカロライナの湿地で一人で生き抜いて、生物学者になる少女の話です。殺人事件が絡むミステリーの要素もあります。ラストがショックかな。でも何となく気づいてしまった。ニューヨークタイムズのベストセラーで、日本でもベストセラーになっているようです。既に映画化も決まっています。作者は20年以上アフリカで動物の研究をしていました。この作家のノンフィクションも面白そうです。
「海を抱いて月に眠る」(深沢潮)も面白かったです。朝鮮半島から弾圧を逃れて友人たちと小さなボートで日本に密航してきた父の、生前には隠していた過去をめぐる小説です。以前にkindleで読んだ「Pachinko」(Min Jin Lee)は四世代にわたる在日の人たちの物語でした。Pachinkoもすごくよかったのですが、あまり歴史や政治が全面に出ていませんでした。この本では日本でも朝鮮戦争や北と南の分断が在日の人たちの日常に深く影響していることがよくわかりました。
「月の満ち欠け」(佐藤正午)は誰かが褒めているのを読んで興味を持ちました。女性が次々と生まれ変わって、過去に愛した男性を捜し求める話です。名前を覚えるのが苦手なので、誰がどの人の夫で何世代目なのか、時と場所が行ったり来たりでややこしかったです。
この本も面白かったのですが、読書会の短編を読み込んでいると、中編小説がだらだらとした描写で無駄が多いような気になりました。その描写の妙を楽しむのでしょうが。
10月の読書会は再びフォークナーのBarn Burningです。富や社会的矛盾に対する怒りを内に持っているのですが、内からこみ上げる怒りや恨みを自分で理解したり表現したりできないアナーキーな荒くれ者の父親と、まだ幼くて理解できないままそんな親に翻弄される少年を内面から描いています。描写する文章がとても難解ですが素晴らしいです。今年の6月にも取り上げました(URL)をクリックしてください。原稿がでます。フォークナーは読むほどに好きになります。